カテゴリー
映画レビュー

046 「がんばれ!チョルス」(2020)

<基本情報>
2019年、韓国発。
監督は、イ・ゲビョク、主人公を、チャ・スンウォンが、それぞれ、務める。
原題は、「 Cheer Up,Mr.Lee」。

 この作品を、友だちと、鑑賞した。けど、それは、間違いだった。僕は、映画をみて、涙を流すことは、あまりない。さも、はじめから、大人であるかのような、勘違い。もう、分別はわきまえている、そんな、物語ひとつに、感情が揺さぶられることなんてない。いってみれば、ただの、かっこつけなのだ。そんな自分は、もろくも崩れさってしまう。人目もはばからず、号泣してしまった。友人に、泣き顔を見られるのは、なんとなく、恥ずかしい。

 同じ時期に、韓国の映画で、注目されていた「パラサイト 半地下の家族」と、共通することがある。それは、前半と、後半の対比である。導入は、どちらも、コメディ要素に、溢れている。観客は、こういうふうに、話が進んでいくんだなと、思う。それを、いい意味で、裏切ってくれる。その、豹変ぶりが、激しいほど、僕らに、もたらす、衝撃や、印象度も、比例して、大きくなる。

 難病と闘う、少女が登場する。その設定をみると、よくある感動ものだと、あなたは、思うかもしれない。だけど、それだけでは、この作品は、語ることができない。悲しみは、突然に、訪れる。それにともなう、予告は、誰もしてくれない。だけど、それを乗り越えていく力が、人間には、備わっているんだと、僕は思う。一人の力では、どうにもならないことが、社会の片隅で、見捨てられることなく、光をあびる。その光景は、なんともいえない、熱狂を生み出す。

カテゴリー
心情

意味を求めてしまう僕らは

常に、新しいものを、探している。
揺れ動く時間は、止まりそうにない。
街ゆく人は、すべてを、やり尽くした顔だ。

幸せになろうと努力して、幸福を手に入れた人を、見たことがない。
いっさいの歓びは、過去を、取り戻すことに、集約される。
あのとき流れていた、何気ない日常に、今、自分が欲しいものの全てが、存在していた。

労働がもたらすことなんて、少しの疲労と、わずかばかりの金に、すぎない。
まして、承認や、役割を、与えてくれるという幻想は、捨てる。
それでも、意味を求めてしまう僕らは、きっと、愚かなんだろう。

心が、外部に、開けすぎている。
他者も、自分と同じように、感じているにちがいない。
優しすぎるあなたが、もっと、生きやすい社会に、なるように。

カテゴリー
自分のこと

風が、愛を運ぶ

 欲望に、忠実に生きる。なんで、そんな簡単なことが、できないんだろう。世の中には、いとも容易く、願望を満たす方法が、転がっているというのに。だけど、僕は、思う。それは、安い幻に、騙されているんじゃないか。こうすれば、あなたは満たされますという、うたい文句を片手に、お金を、得ようとする。それは、まさしく、資本主義という感じだ。

・人間らしさとは
 あいつらは、馬鹿だから、こうすれば、コントロールできる。いつも、おなじ風景をみている気がする。人が、人を支配する。自分は、特別な存在だと、勘違いする愚かさも、どうせ、なにやっても、うまくいかないんだからと諦めて、成熟を拒む単純さも、嫌になる。人間的に、なりたければ、ただ、怠惰になればいい。発信したい言葉を、紡ぎ、自分の生きたい物語のなかに、身を置く。どうせ、僕らが、考えなければいけないことの、大半は、すでに、語り尽くされている。

・孤独に寄り添う
 10代でおきる、性の揺らぎは、まるで、異世界の話のように、置き去りにされる。どうやら、僕は、私は、男であったり、女であったりするらしい。そして、他者の身体に対して、欲情したり、抑えきれないエロスを、見出したりする。淫らになることを、恐れ、その反動で、頭の中は、灰色の色情で、埋め尽くされる。性愛について、語ることを、ためらわない大人で、ありたい。僕は、たまたま、ゲイという属性を有していた。それに、ついて、なにか特別なことはない。ただ、誰しもが通るように、自分の、知らなかった自分を発見しては、とまどい、ときには、泣いてばかりいた。

     ★     ★     ★

 どんな小説でも、愛はすばらしいと、直接的に言葉にしない。ときにそれは、強固なものとして、前置きされる。人生のなかで学ぶ、大きな意味のなかに、それは、ある。複雑な感情を、言語化して、だれかに届けたいと思う。だけど、やっぱり、全部を表現しきれない。だけど、それで、いい。その、世界に顔を出さなかった気持ちに、愛が存在する。文面に並ばなかった行間に、価値が含まれる。それが、あなたさえも、巻込んでいく。その風は、美しいのだ。

カテゴリー
思考

ニルヴァーナで会おう

 社会を、正しく知覚しようとすれば、するほど、訳が分からなくなる。外で、けたたましいサイレンが、響く。部屋の中で、瞑想するみたいに、天井のシミを眺めていた。どうして、僕は、いま、ここにいることを許されているんだろう。あるいは、許しを得た命というものに、どれだけの価値が、あるんだろう。たぶん、今日も、どこかで、誰にも届かない声を押し殺して、耐え忍びながら、日々を送る人間が、たくさんいる。そこに、フォーカスしない言論は、嫌いだ。

      ★     ★     ★

・金と権力
 富が、十分に行き渡っていない場所がある。困窮している者は、何を手にしたいと、思っているんだろう。もし、そのすべてが金と、権力だと決めつけるなら、たぶん、あなたは、この世界のことを、誤解している。黒人が、権威をもつことは、間違っている。同性愛者の、人権なんて、どうでもいい。障がい者が、選択できる人生は、たかが、知れている。標準からずれる人間は、無価値に等しい。それが、社会を窮屈にしていく。だから、僕は、はっきりと言う。欲しいのは、名誉じゃなく、不平等が、既に存在していることを認識する知性だ。

・世界は、すでに救済されているのか
 この一瞬が、気持ちよければ、それで良い。これまでの歩みや、過去に縛られるのなんて、まっぴらごめんだ。韓国との歴史問題、そんなの、知ったこっちゃじゃない。そう考えると、ある意味、生きやすい。だって、全体を見渡すことをしないから、自分が搾取されていても、気付かない。救済を求める声が、かき消されていく。だけど、いったん、立ち止まる。「普通である」ということが、一番いいとする風潮。必死になって、規範を守り、他の人と同じでなければいけないプレッシャーに苦しむ。そんな、生き方を、ぶっ壊してく。それこそが、ここで発信しなければいけないことだと思っている。

      ★      ★      ★

 「世界」という言葉が、含有する意味って、なんなんだろう。遠い異国のことかもしれない。あるいは、宇宙のことかもしれない。でも、まちがいなく、その中心にいるのは、自分という存在だ。僕が、ここで、噛みしめている命は、いつか、尽きていく。多種多様な欲望も、憧れも、理性も、なにごともなく、消え去っていく。だから、もし、永遠を手に入れることができなくても、ニルヴァーナ(死後の世界)で、お会いしましょう。きっと、それが、生きていくことの、醍醐味だと思うから。

カテゴリー
心情

それでも祈る

お風呂あがりの、僕は、上機嫌だった。
銭湯の脱衣所で、大雨の災害のニュースに、目をやる。
今、ここに流れている時間は、フェイクのように、空虚であることを認めざるをえない。

今日、失われた命と、まるで無造作に、生き延びた、魂。
その両面を含めて、ひとつの世界なんだと、あなたは、諭す。
でも、そんな、うわっつらな解釈なんて、いらない。

この先の、延長上に、たぶん、「死」がある。
その時は、苦しいかもしれないし、痛いかもしれない。
いっそのこと、安らかに殺してくれという、傲慢な願望を、焼き尽くせ。

人の命について、語れるほど、賢くはない。
だけど、せめて、慰めの言葉を紡ぎたい。
その行為が、意味なんてないと、批判されても。
#被害が最小限で済みますように

カテゴリー
心情

ときには、戦うことも必要なのかもしれない

自分が、どうありたいか。
なにに心を奪われて、だれと生きていくのか。
たぶん、それは、時間とともに変化していく。

「これからの日本は、こうなっていきます。」
そんな話が、できたら、かっこいいかもしれない。
だけど、わりと知られていないけど、未来を予測できる人間は、いない。

発達するAI、増加していく外国人労働者、腐りきった政治。
「危機感」という、安易な言葉では、説明できない不安が、増大していく。
変わらない町並みと、いつもあくびばかりしている友だちの姿が、尊い。

ここにある、幸福を感じる瞬間だけを、大切にしよう。
どんなに、馬鹿にされようと構わない。
それを、奪おうとするなら、強い悪意をもって、僕は戦う。

カテゴリー
映画レビュー

045 「 BOYS ボーイズ」(2020)

<基本情報>
もともとは、テレビ映画だったものが、大きな反響を受け、オランダで、2014年に、劇場公開にいたる。
第33回オランダ映画祭で、批評家賞など、2部門で受賞。
日本では、名作を発掘するフェスティバル「のむコレ3」で、上映された。

 相手に、好意を抱いていることに、気付く瞬間がある。恋とか、愛とか、あるいは、べつの呼び名なのかもしれない。その感情から、目を背けようにも、徒労に終わる。確実に、大人になっていく身体に、心は追いつかない。アンバランスな状態を保ちながら、必死で、前に進もうとする、彼らの姿は、思いのほか、眩しい。同性愛とか、ゲイとか、セクシュアリティーとか、それらの言葉から、わき起こる想像に、目を向けて欲しい。それが、拒絶だったり、嫌悪だったりとしても。この世界に存在する、人を想う、多様な形を、尊重できるように。

 主人公・シーヘル(ヘイス・ブローム)の家族が、織りなす生活は、物語に、アクセントを加える。兄のエディ(ジョナス・スムルデルス)は、不良っぽいところがある。思春期のころの、既存の枠組みを壊して、悪さをしてみたい衝動。ルールをただ、遵守することだけでは、味わえない感覚。そのせいで、父との、関係は、良好ではない。親子だから、うまくいくこと、そうじゃないことがある。それでも、うまくやっていこうと努める、懐の深い、父親の背中は、大きかった。

 80分の尺は、そう長くはない。だけど、そのなかに詰め込まれている、緊張や、感動は、まるで、永遠のようだ。画面ごしに流れる音楽、気の利いたカット割り、俳優らの瑞々しい演技。どの要素も、欠けてしまってはいけない、映画の一部分になる。これは、いわゆる、シーヘルとマーク(コ・サンドフリット)の、少年同士のラブストーリーだ。かと言って、その一言で、終わらせたくない。自分の気持ちを、押さえ込んでいたことを、認識し始め、本当に大切にしなければいけないことを、明確にしていく。人生における、大きな意味について、疾走感をもって、描き出していくさまは、たくさんのドラマで溢れている。

カテゴリー
心情

お金と僕

全ての価値は、数字で、置き換えられるとしたら、虚しい。
気付いたら、値札のついた商品に、囲まれていた。
べつに、欲しくもないのに、それは、偉そうな顔をしている。

お金は、僕にとって、どんな意味をもつのか。
たぶん、社会参加のための入場券だと、思う。
貨幣をもたない者は、社会から排除される仕組み。

金を払えば、人を雇える。
みんなが、疑わない、そのルールは、いつから、できたんだろう。
経済が、世界を支配していく。

お金で、幸せを買えるならば、いっそのこと、楽なのかもしれない。
大勢が、無価値であると思うことに、大金をつぎ込むやつが、いる。
そういう世界が、好きだ。
画一化されない、今を求めて。

カテゴリー
社会の出来事

殺伐とした空気のなかで

 いろんな思想を持った人が、いる。SNSから流れてくる情報を、飲み込むまで、時間がかかる。心にモヤモヤが、溜まっていく。世界には、自分と似たような人間だけが、暮らしているわけではない。それぞれの主張に、目を通すことで、精一杯になる。だけど、もし、そこから、自分なりの考えを抽出できたらと思いながら、文章を書きたい。

      ★    ★    ★

・「BlackLivesMatter」について
 子どものときは、分からないだろう。自分が生まれた属性と、一生向き合っていかなければならないことを。肌の色が違うだけで、不当に扱われる。どんなに、あなたが、誠実であり、なんの落度もないことを証明しても、聞く耳を持たれない。抑圧される側の、声を、届ける手段を、僕らは、探し続けている。
 教育という名の下で、歴史に触れる。人間は、絶えず、権力を欲し、人を蔑み、殺しあってきた。その過ちについて、学ぶことに、ほとんどの意味が、含まれている。だけど、やむを得ず、暴力にうってでなければならなかった、差別される側の、行為について、注視することができなかった。どんな種類の暴動も、略奪も、内乱も、ひとつのまとまりとして、捉えていたからかもしれない。もし、他者の痛みを、分かち合えるのであれば、僕は、必ず、彼らの声に、耳を傾ける。

・一歩踏み込む 
 「差別を、してはいけません。」と言う人たちにたいして、無関心でいる。はいはい、あなたはいい人ですねと、受け流す。はたして、それは、本当に興味がないだけなのか。いま、差別されている人たちが、声をあげることによって、現状維持が、阻まれる。それに、恐怖しているのが、僕らの本音だとしたら。それに、気付くことが、面倒だから、遠ざける。べつに、今私が、困っているわけじゃないし。
 だけど、一歩、踏み込むことが、必要でなはないか。黒人であることを理由に、被害をうける。性的マイノリティーであることを隠して、生活しなければならない。障がい者は、身の程をしるべきだ。あなたは、いつも、批判をする立場だったかもしれない。だけど、今、世界中で、起きていることは、何も間違ったことはしていないと、信じているあなたに、向けられて、発せられてる言葉だと、思って欲しい。自分のなかの誤った考えを、改めていく。価値観を、アップデートしていく。そうやって、僕らは、知を愛してきたのだから。

     ★     ★     ★

 なぜ、いま殺伐とした空気に、包まれているのか。どこの組織にも属さない人間を、どう扱えばいいのか、社会は戸惑っている。名もなき人の声にたいして、どうせそんなものは、だれも相手にしない。そう、権力者は、考えているだろう。そうやって、民衆の意見を、蔑ろにしていく。その事態を、回避するために、僕は、ここから、発信していく。

カテゴリー
思考

生きる理由

 有限の命。死を予感した瞬間。今を生きる理由を探すけど、みつからない。僕にも、ちゃんと最後が来るとおもうと、安心する。狂気に満ちた空気に、おかされていく。道ゆく人は、みんな、なにも疑わずに、ただ、明日を見つめていた。社会の付属物かであるように、従順に、事をこなしてゆく。普通のように、振る舞えない自分は、たぶん、痛々しい。

      ★     ★     ★

・線引きという暴力
 今の立ち位置は、どうやって確立されたのか。僕は、とくに努力した覚えはない。だけど、食うことに困らず、住む家もある。だけど、世界は、そんな人ばかりじゃない。十分に栄養をとれない子ども。路上で暮らすホームレス。空爆に怯える民衆。激動していく社会に取り残されたように、ただ、我慢を強いられる。
 例えば彼らを弱者と、呼ぶ。そうやって、線引きをしたとき、ちっぽけな僕は、突如として、強者になる。こっち側と、あっち側。その境界は、いつからでき、何を基準に、人間を分断しているのか。貧困に陥るのは、努力が足りないからだという言説は、嫌いだ。自分の能力が高いから、それだけの見返りは当然である。だけど、あなたは、ただ、環境に恵まれていただけなのかもしれない。

・虐げられし者の声
 老後のために、蓄える。いざ、困ったときに、準備をする。そうしないやつは、そこらへんで、野垂れ死ねばいい。そんな世の中は、はたして成熟した社会と言えるのか。何者もなれなかった、何のとりえもない、どこにでもいる人間が、誰にも迫られることなく、死ぬまで、豊かに生きることができる。そんな世界が、好きだ。
 みんな、どこかしらは、不完全なはずである。それが、生きていくのに、致命的だったり、案外そうでない人もいる。いかに、抑圧される側の声を、表出させるか。その声が、うねりをあげたとき、社会という怪物に、抵抗できる。

      ★     ★     ★

 結局、僕がここで、言いたいことは、社会は、いくつもの階級に分かれていて、そこで暮らす人間は、けっして全員が、幸せじゃないということだと思う。じゃあ、どうしたら、良くなるのかを、問い続ける。それが、生きる理由になる。