キー・ポイントは、弱さである。全ては、そこから始まっている。きっと、その弱さを、誰もが、理解できない。それは、体の中で、腐っていくものである。どれだけ、わかっていても、自分で、なおすことはできない。何かの拍子に、消えてしまうものでもない。道徳的な弱さ、意識の弱さ、そして、存在そのものの弱さ、いろいろなものが含まれている。そんなことを、言い出せば、弱くない人間なんて、いないのかもしれない。けれども、それは一般論である。一般論を、いくら並べても、人は、どこにも行けない。僕は、今、とても個人的な話をしている。
だからこそ、僕は、ここではない、どこかに、行きたいのかもしれない。一人で、知らない土地を、歩きまわっていれば、少なくとも、その弱さが原因で、誰かに迷惑をかけずに済む。十代の半ばから、ずっと、それを、感じつづけていた。本当の弱さというものは、本当の強さと、同じくらい、稀なものである。たえまなく、暗闇にひきずりこまれていく、弱さというものが、実際に、世の中に、存在する。
結局のところ、黒い影から、逃げきれないのも、その弱さのせいである。僕自身には、どうにもならなかったのである。けれども、生きることは、これからも、続いていく。やっかいなものを、抱え込んだまま、それと、うまく付き合っていく方法を考えなければいけない。それは、よく知られているように、難しい作業なのだ。影は、僕の体、記憶、弱さ、矛盾、全てを、好んで、求めてくる。影から逃れ、自分を保つことは、可能だろうか。