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自分のこと

あんな大切な夢を、どうして忘れていたんだろう

 自室の中の置物たちは、静かに僕を見守っている。寝るときも、少し気分が落ち込んでいるときも、何も語らずじっと。何かに愛を注ぎたいから、そっと彼らを慈しむ。いつか、いざとなれば動き出し、正義のために戦ってくれるんじゃないか。いや、たかが人形だからと言われても、今の僕には、そんな言葉は、なんの意味も持たない。だって、世界をどう解釈するかは、自分で決めるから。

★   ★   ★

・罠を暴け

 生きづらいと感じている人に、共感する僕がいる。大勢になじめず、居場所のない苦しみに耐えるとき、人は一人になる。そんな弱い部分を隠そうとしても、嘘はすぐに剥がれ、虚しい涙が頬をつたう。結局、私たちが立ち向かわなければいけないのは、こちらに暴力を有無を言わさず、ふるってくる奴らであって、自分ではない。敵は外側にいると、確信したとき、あなたはほんの少し強くなれるはずだ。でも、力に力で対抗するアホらしさに気付いている崇高さ(優しさといっていいのだろうか)が、行く手を阻む。全てのバイオレンスを否定する理論は、あちら側の有利になる罠みたいに、よくできた仕掛けだ。だって、不条理な秩序に対して、声をあげるときも、ある種の乱暴さが伴うから。

・淀みのなかの言葉

 夏の暑さが、それぞれの孤独を溶かしていくみたいだ。そういえば父が死んだ日も、こんなふうに日差しがきつかった。季節が巡っていくなかで、心だけが立ち止まっている。もし、いま、父に伝えるべきことがあるなら、それは何なんだろう。きっと今の僕は、何ら変わらずあのときのままだよと、言おうとしたとき、少しの、淀みが、顔をだす。もう僕は、イノセンスな存在ではない。でも、思う。あなたが、家族を必死になって愛し、守り続けた日々のなかにいた、まだ何も知らない幼な子だった自分。時が経って、背丈が伸びようと、そのままの不器用な自分が、ここにいると。

★   ★    ★

 父は、眠りのなかで、「ごめんね。」と、僕に告げた。あんな大切な夢を、ふと思い出す。その一言は、全ての創造につながっている。世界を深く感じようとする繊細なアイデンティティが、この社会を覆い尽くせばいい。僕らを支配しようとする奴らは、きっとそれを一番、恐れているに違いない。コントロールしやすい人間ばかりに教育しようとする仕組みを、燃やし尽くせ。後になって残るのは、自由と知性に溢れた世界だから。まだ希望が残っているうちに、掠れた喉を痛めつけるみたいに、思考を言葉にしてみる。そんな夜。

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映画レビュー

048 「君たちはどう生きるか」(2023)

<基本情報>

宮崎駿が、監督、原作、脚本を務める。 タイトルは、吉野源三郎の著書を借りたもの。 公開初日まで、作品に関わる情報を出さず、異例の宣伝スタイルをとる。 にもかかわらず、興行収入は好調の出足。

★ ★ ★

 映画レビューから遠のいていたけど、この作品を観て、久しぶりに書きたくなった。もちろん、これから映画館に足を運ぶ人もいるだろうから、ネタバレはしない。だから、ぼんやりとしたことしか言えないけど。観終わったあとに、面白いと僕は思った。もちろん、好みはあるので、様々な意見があると思う。それが、真剣にクリエイトされたものなら、なおさら。

 この作品を語るには、なぜ僕らは、絵を描いたり、音楽を奏でたり、小説を書くのかという問いを背負わなければならない。いうなれば、フィクションの形を借りて、何を表現しようとしているのか。この社会のここが、変だよねとか、死んでしまったら、たぶんこういう世界に行くんだろうとか、漠然としたイメージが無意識のなかにある。その姿を、具体化するのが、ある種の意味だと僕は思っている。

 それを意識的にできる作り手のひとりが、宮崎駿という人間だ。もちろん、エンターテインメントとして、成立しているのが理想である。今回の作品は、やや僕の思う意味を重視して、彼の描きたい世界が、ふんだんに盛り込まれ、観客を置き去りにしてしまうかんじは、たしかにある。でも、それでいい。そういうのが見たかったという人は、少なからずいるから。きっと、この先も、愛される作品になるにちがいない。

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