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思考

死神になりたい

 蝉の鳴き声が、じんじんと耳にさわる。今年もあいかわらす、夏が巡ってきたことを知る。どうして、人は、まわる季節のなかで、同じような過ちを、繰り返すんだろう。傷つけるつもりはないんだけど、本心を語ることは、たぶん、誰かを悲しませることになるんだと思う。波風をたてることを、ひどく嫌う僕らは、それでも、本当のことだけを探していこうと決めた。この、おいしげる緑と、ふりかかる日差しのなかで。

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・戦争について
 センシティブな部分に切り込むには、勇気がいる。そこに潜り込むほど、無知であることを知らざるえない。けれど、戦争について、考えることは必要だし、生まれ落ちた国の成り立ちや歴史から、学ぶべきことは、たくさんある。たぶん、原爆が、ヒロシマとナガサキに落とされたことは、だれもが知っている。それから74年経ったいまでも、その日、一瞬のうちに、なんの落度もない人間が、犠牲になった事実を顧みることを、意味がないとあなたが言うならば、たぶんそれは間違っている。

・まともであれ
 アメリカの下した決断が、良かったとか、間違っていたとかを議論するつもりはない。(というか、僕には分からない。)たぶん、いろんな歴史観があり、思想があり、考え方がある。戦争で散っていった勇敢な命をたたえ、愛国心をもつ人だっているし、戦争犯罪について反省すべきと言う人もいる。政治的立場が、右に偏ったり、左の思想に影響される人もいる。混迷する社会のなかで、幸せに生きることが困難な時代に、僕らははたしてどんな未来に、辿り着きたいのか。それを示そうとするまともな大人は、意外なほど少ない。

・アメリカが、好きか、嫌いか
 令和を生きる若者にとって、今更、アメリカを憎むべきだという言論はリアリティーがない。それよりも、震災のときに「トモダチ作戦」を展開した姿の方が、印象に残っている。西洋の文化を取り入れた日本で教育をうけた僕は、自由と平等と民主主義を愛するアメリカを嫌う理由がみつからない。

・自由を求めて
 資本主義のなかで、すべてがうまくいってはいないが、ある程度みんな幸せに暮らしているじゃないかという事実は、たぶん拭いきれない。今もそうだけど、ただ国家とか、政治とかを差し置いて、自由になりたかった。できるだけ個人の価値を高めてきた。その結果、共同体や家族が解体していく。不安定な経済情勢を前に、ただ貧困に嘆くことしかできない僕らは、滑稽にみえる。それが「時代」というものだと、切り捨てるならば、団結して、意義を唱え、大きな体制側に、声を上げるべきだろう。

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 死神が降臨するとき、たぶん、それは冬の時期だ。日が差しかかり、薄くもやのかかった朝焼けの寒い一日の始まりに、彼は登場する。魂の管理を取り仕切る仕事は、この世のどんな職業よりも、たぐいまれな才能を要する。紛争が起きて、たくさんの人が死んだ日は、忙しいのだ。大勢を黄泉の国へ、移送するから。そんな妄想にふける、8月の午後。まだ、暑い日は、続くだろう。死神が、運んでいった精霊たちが、深い眠りのなかにいることを願って。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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