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思考

愛について

 愛も、いつかは朽ち果てる。僕らの間を結んでいる、不安定で、実体のない、奇妙な輝きとも言える関係性は、時とともに、怪物の心臓のような、グロテスクなものに変化していくかもしれない。綺麗なものだけを目に映していくという習慣は、いつのまにか、暴力的な人間性さえも、排除していく。
 でも、忘れるな。誰かを傷つけたくて仕方ない衝動も、保持する強大な権力を行使したくなる願望も、まっさらな大地に捨てることはできない。いつかは、牙をむく人間の破壊行動は、世界を混沌へと導く。いま、もし手にしている平和が、かけがえのないものの正体だと気付いたならば、僕らは、それを絶対に手放してはならない。

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・浮上する力
 ここから、浮上する力が欲しい。どん底とは言えないまでも、今いる場所に、完全に満足している人間が、どれほど居るのだろう。少なからず悩みを抱えている。別に、すべてをぶっ壊したいとか、自分自身を不必要に追い込みたいとは、考えていない。でも、成功者への妬みや、自分とは噛み合ない人間(それが、健常者や障害者だろうと)への不快感は、まったく持ち合わせていないというのは、嘘になる。

・人間の種類
 はたして、人間とはいくつかの種類に分かれるのだろうか。そんなの人間は1種類しか、存在しないよと、あなたは思うかもしれない。人種、暮らし、ジェンダー、性的指向、国籍、それぞれの異なる属性をもった僕らは、同じものを望み、同じ世界を築きたいと願うのか。お金持ちだけが、幸せに暮らす権利を持っていて、運悪く社会から排除され、不安定な暮らしをしているやつは、虫けら同然だとはねのける。しまいには、自己責任なんだから、貧乏はお前のせいだよ、風俗嬢だって自らあなたが選んだ職業だと言う。そんな社会は、いっそのこと、宇宙の散りくずになればいい。

・他者の合理性
 ようは、僕たちが成さなければならないことは、どこまで他者を理解できるかを見定めることだと思う。「理解するのなんて不可能だ」と、口を揃えて言う。でも、ちょっと待って欲しい。あなただって、私達と同じ立場になれば、同じ行動をとるはずだ、そこにはひとつの合理性ともいえる真実がある。それは、れっきとした理解の一つではないか。人間は、どこまで自分たちのことを決めていいのか。その判断は、たぶん神様じゃないと分からない。とりあえず僕の中の、不安や絶望が、他の誰かにも通ずるものがあると信じたい。みな、傷つけば、そこから赤い血がでるのは、同じはずだ。

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 身内ではない知らない人たちへの不信感は、たぶん消えない。そう思うのが、人間だから。たとえ、そうだとしても、別に構わない。気持ちを共有する、相手の痛みを知る、背負っているものの重みを想像する、社会の複雑さを考慮する。そうやって、なんだかんだやっていけるのではないか。いちからすべて理解する必要はない。ただ、あなたがそこに居ることを推し量る。それだけで、世界は輝きだす。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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