カテゴリー
思考

沈黙のことば

 自分は、世界で一番大事なものだなぞと、思っとるかぎり、まわりの世界を、本当に理解することは、できない。世界は、いつも、個人を隔離しようとする。あらゆるものから切り離された僕は、まるで、目かくしをされた馬みたいに、真っ暗闇のなかをただ、暴れ回っているだけなのだ。

   ★    ★    ★

・マルクスを、想う
 資本主義が席巻する社会で、誰しもが、いかにして、収益を絞り出していくかというメカニズムについて、知ろうとする。例えば、10時間かけてやっていた仕事が、8時間で、片付くようになったからといって、一日の労働時間が、短縮されることはない。それどころか、上昇した生産性を持って、より多くの生産物を、生み出すことを求めようとする。そして、新たな収益を、資本家は自分のものにして、労働者の報酬を、増やそうとしない。そんなことは、だいぶ前から、マルクスが、明快に答えているはずなのに、なにも変わる気配は、ない。

・どこまで、自己責任を、押し通すのか
 今のうちは、いい。毎月、振り込まれる給料のうち、少しは、貯金にまわして、残ったお金で、休日に恋人と映画を見るような幸せは、手に入れることができる。きっと、何の魅力もない、能力もない人間が、最後まで、人生を、謳歌することができる社会を目指すのが、正しいんじゃないだろうか。おっさんになっても、バイトをしている人間は、底辺なんだから、そのへんでのたれ死んだとしても、自分のせいと、片付けてしまっていいのかを、これからは問い続けるべきなんだ。

     ★    ★    ★

 「自尊心を捨てろ。草に語りかけてみなさい。何を話すかは問題じゃない。ただ話しかければいい。大事なのは、それを自分と平等に扱うということさ。」いつからか僕らは、ヒューマニズムの波に、侵されている。道端に生える雑草や、塀の上をつたう野良猫、サカナやカラスにたいする共感があれば、彼らの沈黙のことばに耳を傾けることが、できるかもしれない。そして、今を取り巻く、不気味な深刻さに気付く感性を、磨くことができるはずだ。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です