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映画レビュー

015 「きっと、うまくいく」(2013)

<基本情報>
インドで、2009年に公開され、大ヒットした。
屈指のエリート理系大学ICEで、繰り広げられる騒動と、その10年後の物語をベースに、二つの時間軸で、ストーリーが進行していく。
大親友の3人組が、それぞれの生い立ちや、将来の展望を語りながら、絆を深めていく。

 まず、170分という長尺に、少し尻込みしまう人は、多いかもしれない。その上、文化も習慣も違う、インドの映画を観るまでの、ハードルが少し、たかい。だけど、この作品は、そんな悩みを吹き飛ばす、決して観終わったあとの後悔のないクオリティーに仕上がっている。海外の作品を観ると、少しその国について、理解が深まる気がする。その上、エンターテイメントとして成立してしまう、インド映画の底力を感じる。

 大学の学長の方針は、競争に勝つことが全てだ、相手を蹴落として、自分が一番になることを標語にしている。彼は、男ならば、エンジニアに、女ならば医師になることが、幸せの道だという確固たる自信に満ちている。競争社会で知られるインドの、お国柄にそった人だ。だけど、型破りなランチョーは、その教育の在り方に、異議を唱えていく。

 そして、この映画では、「圧迫」という言葉が、幾度となく発せられる。その背景には、若者の高い自殺率が、関連している。人生における成功を掴むために、高学歴を求め、そのプレッシャーに押し潰される。本当にやりたいことと、親が望む進路の狭間で、揺れ動く若者の、切実な心理状況が、巧みに描かれている。

 日本では、大学に行く意義が問われ始めている。何の目標もなしに、ただみんなが進学するから、そうする。純真に、ただ学問を学びたいという学生は、一握りかもしれない。どこに向かうかが分からなくなったとき、「きっと、うまくいく」と、心の中で呟けばいい。生きることへの虚無感、失望、不安、それらの、全てを吹き飛ばす力を、この作品は与えてくれる。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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