カテゴリー
映画レビュー

005 「ポエトリーエンジェル」(2017)

<基本情報>
若手個性派俳優・岡山天音と、モデルとして、女優でも活躍する武田怜奈を主演に起用。
お互いのフレッシュな演技が、作品を盛り上げる。
あまり馴染みのない「詩のボクシング」というスポーツを通じて、若者の成長を鮮やかに描いている。
監督・脚本・編集は、気鋭の飯塚俊光が務める。

 リングにのぼり、自作の詩を読み上げ、観客により強く思いを届けたほうが勝者となるスポーツが、実際にある。僕は、そんな競技を、知らなかった。でも、一度、観てみると、案外興味を引く。映画に登場する各キャラクターが、思いのたけを叫ぶシーンは、どことなく不安定さを持ちながらも、しっかりと最期まで役を演じきる気概が、感じられる。

 人前で、自分が作った文章を声に出して表現するのって、どんな気持ちなんだろう。もちろん、恥ずかしいっていう思いもある。でも、僕らの人生には、ここぞというときに、声を出して主張しなければならない事柄が、存在する。この作品は、その初期衝動をうまく捉えた形だ。

 普段、言えない思いを抱え込んでいる人にはもちろん、観て欲しい。田舎で暮らす青年が、「俺だって、夢をみたいんだよ。」と父親に泣きつくシーンが、胸にささる。あなたが、あたり前に手にしている、可能性や、思い描く夢や理想は、一部の人にとっては、藁をもすがる思いで獲得したいものかもしれない。

 僕は、映画を見終わったあとの余韻が、凄く好きだ。そこには、まだ消化しきれない様々な感情がいりまじる。あのとき放たれた言葉の裏には、実はこんな考えが根底にあるんじゃないだろうかと想像してしまう。でも、この作品は、思ったことを素直に届けることの、崇高さを教えてくれる。夏が始まるこの時分にぴったりな雰囲気を纏った青々しさが、際立つ。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です