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思考

模倣

 人とは違う部分を、武器にして、お金にかえる時代がきたと、一人の賢者が語る。誰だって、不完全な自分を、消すことなんてできない。ありのままの個性が、すでに、愛されているというのは、少し呑気すぎやしないか。その他大勢に埋もれながら、私という牢獄のなかで、もがきながら生きていく人生に、辟易している。

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・哀愁
 才能、オリジナリティー、非凡さだけが、この社会を、生き抜くために、必要なんだ。そういって、なんの取り柄もない人を、排除していく。都会の波に、もまれながら、ずる賢さを、身につけていく日々。まがいものが、氾濫する世界において、今度は、誰が、偽物をつかまされるのかを、注視する、他人のまなざしは、どこか、哀愁さえ、漂っている。

・ひずみ
 排斥するのが、目的なんだと、堂々と、主張する彼らのなかに眠る、劣等感と、自尊心。どんどんと、生きづらくなる世の中に、なにかものを言いたげな、心のひずみは、隠しようがない。独自性を、尊重するというきれいごとのそばで、ひとりひとりが抱える、ここに至までの、複雑な経過を、蔑ろにしているのは、乱暴のほか、なにものでもない。

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 人格も、性格も、人間性も、断片的なものによって、形づくられている。いま、僕が発する言葉も、時折みせる仕草や、頭の中を巡る思考さえも、すべて、模倣に過ぎないなら、この私という自我は、どこからやってきて、そして、どこに、向かっているのだろう。年の瀬の、慌ただしさのなかに身を任せては、どこか、ぎこちない大人になりきれない自分を、さらけ出す。傷つくことを恐れて、震えている誰かへ。良い年を、迎えることができるように、祈りをこめて。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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