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日常・コラム・エッセイ

いちごの色

 赤いいちごが、ショウウィンドウに、たくさん並べられている。街の行き交う人々は、その果実には、目もくれず、目的地へと、足早に歩行をつづけている。その中で、ガラスケースのなかの宝石のように輝く生鮮物を、穴があくくらい、熱心に見つめる僕は、都会の片隅で、ただただ浮いているように思えた。

 なぜ、彼らは、こうして、色鮮やかに、発光しなければならないのかを考え込むことをやめ、あてもなく、洗練されたビル街を、彷徨うよう途中で、目的の買い物を、すっかり忘れていたことに気づく。でも、それを買い忘れたところで、たぶん、なにも支障はない。きっと、それは、今日起こる出来事のなかで、たいして、重要なことでなないのだろう。真っ赤ないちごを、眺めることと、おなじくらいに。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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