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自分のこと

あんな大切な夢を、どうして忘れていたんだろう

 自室の中の置物たちは、静かに僕を見守っている。寝るときも、少し気分が落ち込んでいるときも、何も語らずじっと。何かに愛を注ぎたいから、そっと彼らを慈しむ。いつか、いざとなれば動き出し、正義のために戦ってくれるんじゃないか。いや、たかが人形だからと言われても、今の僕には、そんな言葉は、なんの意味も持たない。だって、世界をどう解釈するかは、自分で決めるから。

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・罠を暴け

 生きづらいと感じている人に、共感する僕がいる。大勢になじめず、居場所のない苦しみに耐えるとき、人は一人になる。そんな弱い部分を隠そうとしても、嘘はすぐに剥がれ、虚しい涙が頬をつたう。結局、私たちが立ち向かわなければいけないのは、こちらに暴力を有無を言わさず、ふるってくる奴らであって、自分ではない。敵は外側にいると、確信したとき、あなたはほんの少し強くなれるはずだ。でも、力に力で対抗するアホらしさに気付いている崇高さ(優しさといっていいのだろうか)が、行く手を阻む。全てのバイオレンスを否定する理論は、あちら側の有利になる罠みたいに、よくできた仕掛けだ。だって、不条理な秩序に対して、声をあげるときも、ある種の乱暴さが伴うから。

・淀みのなかの言葉

 夏の暑さが、それぞれの孤独を溶かしていくみたいだ。そういえば父が死んだ日も、こんなふうに日差しがきつかった。季節が巡っていくなかで、心だけが立ち止まっている。もし、いま、父に伝えるべきことがあるなら、それは何なんだろう。きっと今の僕は、何ら変わらずあのときのままだよと、言おうとしたとき、少しの、淀みが、顔をだす。もう僕は、イノセンスな存在ではない。でも、思う。あなたが、家族を必死になって愛し、守り続けた日々のなかにいた、まだ何も知らない幼な子だった自分。時が経って、背丈が伸びようと、そのままの不器用な自分が、ここにいると。

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 父は、眠りのなかで、「ごめんね。」と、僕に告げた。あんな大切な夢を、ふと思い出す。その一言は、全ての創造につながっている。世界を深く感じようとする繊細なアイデンティティが、この社会を覆い尽くせばいい。僕らを支配しようとする奴らは、きっとそれを一番、恐れているに違いない。コントロールしやすい人間ばかりに教育しようとする仕組みを、燃やし尽くせ。後になって残るのは、自由と知性に溢れた世界だから。まだ希望が残っているうちに、掠れた喉を痛めつけるみたいに、思考を言葉にしてみる。そんな夜。

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作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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