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映画レビュー

039 「バジュランギおじさんと、小さな迷子」(2019)

<基本情報>
2015年に、インドで公開され、またたくまに、世界中でのヒットにつながる。
主人公・パワンを演じるのは、俳優として、人気の高い、サルマン・カーン。
監督を、カビール・カーンが、務める。
インド映画における、世界興行収入の歴代、第3位を誇る。

 「正直者が、馬鹿をみる。」という、言葉がある。悪賢い人間が、得をし、かえって、真面目な者は、損をすることだ。そんな世界は、嫌だと、あなたは思うかもしれない。だけど、現実は、きれいなことばかりではない。不条理で、あふれている。ときに、誠実であれば、あるほど、苦しむことになる。だから、せめて、映画の世界ではと、救いを求めてしまう、僕がいる。主役の青年・パワンは、底抜けに、お人好しだ。そのことで、事情が、ややこしくなる。だけど、一貫して嘘をつかない人柄が、たくさんの人の心を動かし、それが、大きなうねりとなって、ストーリーを、盛り上げる。

 インドという国は、不思議だなと思う。例えば、人口が多いという、印象がある。なにをもって、あれだけ、たくさんの民衆が、ひとつのまとまりになっているのか。異なるカーストや、宗教が、混在していて、一見、多様性を帯びている。だけど、そのなかで、統一された営みを続けている。一度、バランスを崩すと、崩壊に向かうリスクを抱えつつ、まとまりを維持している。その神秘性に、世界の人々は、惹かれているのかもしれない。

 この作品のテーマは、宗教である。インドとパキスタンの、永きにわたる対立は、そんな簡単に、取り除くことはできない。異教徒に対する弾圧、偏見は、憎しみとなって、あぶり出される。だけど、この作品では、そんな両者の紛争状態を、小難しく、語ろうとはしない。なによりも、大切なことは、「愛」だと叫び、それが、争いをなくしていくと信じる。その展開は、あざといとさえ、思うかもしれない。だけど、それでいい。この映画を観て、感動し、涙をながし、目に見えない絆を、大切にしようと考える。そんな人間の、単純なところが、愛おしくなる。それが、作り話の、醍醐味だ。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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