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映画レビュー

034 「千と千尋の神隠し」(2001)

<基本情報>
宮崎駿監督が贈る、長編アニメーション。
国内興行収入は、歴代1位。(2020.4において)
第52回ベルリン国際映画祭や、第75回アカデミー賞で、受賞を果たす。
久石譲が、音楽を手掛けるなど、これまでのジブリ作品を、請け負ってきた面々が、結集している。

 アニメの王道と言えば、やはりスタジオジブリが手掛ける作品かもしれない。(もちろん、それ以外にも、素晴らしいアニメ映画は、国内で、たくさん生まれている。)その名に負けない、人を惹き付ける、世界観が、そこには、ある。僕が、はじめてジブリに触れたのは、「となりのトトロ」だった。幼少時、風邪で寝込んでいるときに、テレビで放映していたのを、たまたま観ていた。それから、どんなに、時が流れても、緑あふれる田舎の風景だったり、不思議な生き物が躍動するシーンを、忘れることはない。心が浄化されていくような感覚が、大人になった今でも、焼き付いている。

 過去に制作された「もののけ姫」にも通じて、考えさせられるのは、すべてのものに、神が宿っているという信仰心だ。私達は、たえず自然と共生してきた歴史がある。どちらかと言えば、自然を、コントロールしようとする西洋の考え方とは、異なる。山や、海、大地の神様に、感謝するという感覚が、映画を観て、呼び覚まされる。日本人らしさを、言葉で定義するのは、難しい。だけど、たしかに、それを感じる。アイデンティティーにまで影響を与える、作品は、数少ない。物語の中に存在する、八百万の神様が、疲れを癒す湯屋「油屋」は、たぶん、ひとり一人の、心に潜む崇拝の気持ちを、具体化している。

 労働を通して、成長していく、千尋。社会と関わることでしか、知ることのできない、この世界の過酷さ。それは、いっけん、10歳の少女には、重すぎる。けれど、いろんな仲間たちの助けによって、困難を乗り越えていく。先輩のリンというキャラクターのセリフ「俺いつかあの街へいくんだ。こんなとこ絶対に辞めてやる。」が、印象に残る。労働階級に属する、だれもが抱く思い。空想でできたアニメの世界には、似つかわしくない。だけど、しっかりと、現実の世界に生きる僕らの心情を、忍ばせる。そういうところが、名作と呼ばれる理由かもしれない。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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