<基本情報>
新井英樹の人気漫画を、映画化。
2018年には、テレビ東京で、ドラマにもなっている。
監督は、「ディストラクションベイビーズ」の真利子哲也が、務める。
宮本浩次×横山健がタッグを組んで、仕上げた楽曲「Do you remember?」を、主題歌に起用。
僕は、映画を観終わったあとの、余韻にひたるのが好きだ。時間が経てば経つほど、思いが強くなっていく。だけど、この作品は、鑑賞中から、なにか凄いものを観せられているんじゃないかという気がしてくる。それだけ、疾走感や、熱量が、リアルに伝わってくる。男女の恋愛の在り方を、根本から問いなおすような気迫が、満ちている。夏には、浴衣を着て花火大会に行ったり、冬に温泉で温まったりとかいうような、生温い体験を、映像化しているわけじゃない。まさしく、人間対人間の、奥底に眠る感情の、ぶつかり合いだ。
この俳優さんが、好きだから、観てみようという、きっかけになることは、多々ある。それにあたるのが、僕にとって、蒼井優という女優だ。どの作品を観ても、しっかりと、爪痕を残す。ナチュラルな演技にもみえる。だけど、けっして平凡な脇役にならない希少性を、もっている。女のいやらしい部分だったり、弱くて惨めにうつる人には見せたくないような内面まで、しっかりと表現する。たぶん、自分の日常に、出くわしたら、ぎょっとするような役柄もある。でも、スクリーンの中で、水を得た魚のように演じる彼女は、美しいのだ。
女性と交際すること、結婚すること、子をもつこと、それが、男にとって、こんなにも、苦難が待ち受けていることを教えてくれる。普通、うやむやにしたくなることを、宮本(池松壮亮)は、言葉にして、中野靖子に伝える。そのすがすがしさが、なんともいえない魅力になっていく。真正面からは、おぞましくて見るに耐えない、男の加害性。この作品を観たら、たぶんほとんどの人が、男が、いやになると思う。それでも彼は、この2時間をかけて、真の男の在り方を模索しようと、翻弄する。それは、まぎれもなく、宮本から、あなたへ向けた、ファンファーレだ。