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映画レビュー

002 「これが私の人生設計」(2016)

 これは、イタリアの物語である。海外の作品って、あんまり肌に合わないという人もいると思う。でも、この映画は、自然と腑に落ちたように、僕の心の隙間を埋めてくれた。とあるゲイ男性が、登場するんだけど、そのキャラクターが憎めない設定で、笑いを誘う。自分が、ゲイだからか分からないけど、同性愛者が描かれる作品に興味が惹かれる。

 たぶん、同性愛に限らず、セクシュアリティが僕の人生に大きく影響しているからだ。映画は、ひとつのフィクションに過ぎない。だけど、そこには間違いなく客観的な風刺が、影を忍ばせる。そこから繰り広げられる思考は、観る人の心を、解きほぐすかのように、安心をもたらす。

 主人公は、優秀な建築家なのだが、男社会で結果を残すことに苦労している彼女のひたむきさは、素直に心をうつ。たぶん、この映画を売り出そうとしてターゲットを決めるなら、おなじ悩みをもつキャリア女性になるんだけど、僕は、男性にも観て欲しいと思う。ある意味、女性が活躍できない社会は、反作用として、男らしさの呪縛を背負うことになる。男性が、泣き言をいえば女々しいと言われる社会は、生きにくいと、はっきり語らなければならない。性差別に、立ち向かわなければならないのは、なにも、女性だけではないのだから。

 集合住宅で暮らす少年、少女たちの目の輝きが、印象的だ。再開発案を練る主人公との交流が、微笑ましく描かれている。人が、営みのなかで、あるいは大人になっていく過程で、なにが必要なのかを、浮き彫りにしていく。生きにくいのは、あなたにも責任があるという言論に感化されないストーリーがある。他人のために、誇りをもって一生懸命になる姿に、勇気づけられるのは、間違いない。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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