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詩的表現

リミッター

不完全な

部分を

見せるのが

怖かった。

本当の

自分を

さらけ出した瞬間に

向けられる言葉を

想像する。

弱い存在であること、

無能であること、

役にたたないこと、

自信がないこと、

そんな人間は

きっと

誰からも

必要とされないんだと

思ってた。

価値を決めるのは、

自分ではなく

他者である。

もっともらしい言葉が

とても

陳腐に

見える。

あの日を堺に

僕を

無視し続ける社会で

生きることを

決めた。

というより

それ以外に

道はない。

僕だって

大人になる。

働いたりする。

稼いだお金で

腹を満たしたりする。

理性と感情の狭間で

振り切りそうな

リミッターを

制御することに

疲弊する。

いっそのこと

死に帰結する

思考が

よぎる。

誰かを

傷つけても

構わないと

無邪気に

振るまう

自分が

恐ろしい。

手足の震えが

伝染する。

路上に立つ

ミュージシャンの歌声を

食い入るように

聞いていた。

お前は

無価値であるという声に

抗う。

生きるとは

そういうことだ。

僕は

今日も

あの灯台に登り

風に吹かれる。

少し湿った空気を

おもいっきり

吸い込んで

呼吸をする。

いつもと同じように。

作成者: 木下 拓也

1987年、大阪生まれ。ライター志望。
兵庫の大学を卒業してから、フリーターとして働いています。
セクシュアリティーは、人生を豊かにすると信じる人間です。
書いて、伝えることを大切にしています。

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