つい確固たる自分なんてものを探してしまう。そりゃ35年近く生きてきた。それなりの答えはある。それが、邪魔をして挑戦を避ける方向に思考が進んでいく。ずっと同じ状態を保つことはできない。生きるモチベーションが上がったり、下がったり。でも、それでいい。揺らぎの中にいる僕は、強くて美しい。途切れない私を紡いでいく。確かな意味を失ったとき、新しく出会う人たちは、優しい顔をしていた。
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・ノウハウをよこせ、あるいは息をする僕ら
しくじって失敗する。何度でもある。それを人に話して、一緒に笑う。いわゆる、「ネタにする」という行為。そこに、純真さがあればあるほど、完成度は上がる。嘘のない言葉は、誰かの心に響く。でも、もしそのエピソードが、例えば、自分が同性愛者だと告げなければ、成り立たないものだとしたら。そこで躊躇して、話すのをやめた瞬間が、何回あっただろう。
ゲイという属性に、特別な役割を見出そうとしているわけじゃない。きっとこれまで、セクシュアル・マイノリティーという言葉さえも一般的でないときから、彼らは暮らしてきた。自分のダメな部分を、さらけ出せず、中に溜まっていく過程で、どのように生活を乗り越えてきたか。そのノウハウを明確にする必要がある。だって僕らは、今もこうして潰れそうな心を持ちながら、息をしているわけだから。
・ひとまず孤独は横へ置いておいて
揺らぎを人に見せるのが、本当に怖かった。最初に答えを用意しとかないと落ち着かない。きっと不完全な自分は、受け入れられないだろうし、その場から排除されるだろうと思ってた。ここにきて、かっこの悪い僕を見てほしいという考えが芽生えている。大人になるということは、縛りをなくしていくことなのだ。こうじゃないといけないルールを撤廃し、自由に人生を歩く。目の前の見晴らしは緑に囲まれている。
自分の中に疑問を掲げて、納得するまで考える。一人でいるときは、僕はたえず、それを繰り返していた。でも、それもなんだかつまらない。たぶん孤独に飽きてきたんだと思う。周囲から愛される自分なんて想像できなかったあの頃の僕へ。君は、今でも、死んだ父のことを忘れないでいる。悲しみを共有できるパートナーにも恵まれている。だから、心配はいらない。
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こうして文章を綴っている今でも、ガザなんかでは、ミサイルに怯えている子どもたちがいる。戦争を終えよと語りかける遠くの人々の声は届かない。僕の祈りとは逆行して、暴力が世界を支配していく。この同じ空の下で、不条理なことを、いつまで続けていくのか。楽園を描いていく行為に、明確な使命なんていらない。せめて貴方の良心を信じる気持ちが、消えないことを願って。