気の迷いもある。調子の悪い時もある。健やかでいられない日もある。自分を責める気持ちが収まらない。1人になりたい。誰かに迷惑をかけちゃいけないから。孤独に踊る君は、痛々しくもあり、儚く美しい。歳をとれば、分かることもある。時が、優しく僕に語りかけてくる。もう大丈夫だ。さあ、次へ行こう。
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・友人との飲み会で思ったこと
久しぶりに会う彼らは、なんだか元気そうに見えた。それだけで嬉しい。あまり僕は話すタイプでもないから、聞き手になる。みなが、それぞれに憧れた生き方があるのだなと思う。アウトローな男の生き様に感化される者、伝統工芸品を作る職人を目指す者、翻訳の仕事に着手し始める者。選択という行動の重み。人生の岐路。正解の道なんてものはない。ここはまだ、旅の真ん中。
だいたい同年代の集まりだったのだけれど。どうしてこうも、違いができてくるんだろう。個性を尊重しましょうと唱えられて、いくばくか経つ。必死になって、自分だけのオリジナリティー、かけがえのないもの、やむにやまれぬ生きる理由を探す僕らは、本当に生きづらい。だいたい、そんなものは、探しにいくものじゃなくて、向こうからやってくるのだ。いつか訪れる死みたいに。
・血の痕跡
話って、だいたい背景には何があって、これまでの経緯、歴史を重ねて、どうして今が出来上がっているのかが、含まれている方が、面白い。(僕はそう思っている。)問題意識があると言ってもいいだろう。(もちろん、なんの味気もないくだらなさすぎるエピソードも好きなんだけど。)どの文脈で、それが語られているか、ディテールまで豊かに再現されているか。ときに、散りばめられた言葉の欠片が、心に届くときがある。
たぶん何にたいして危機感を感じているのかが、その人の話の根幹にあるのだ。これまで生きてきた環境、出会ってきた人々、乗り越えてきた悲劇、そういうものが積み重なって、視点になっていく。こんなくそみたいな世界で、かろうじて自分を保とうとする。争いが勃発し、傷つけあって流れた血の鮮やかさは、生ぬるい日常に、くっきりと痕跡を残す。
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もちろん僕は、文章を書く人に憧れている。それくらいのことしか、できない。できることは、限られている。その中で、やれることを地道に続けていく。少しでも、下を向いて泣いている人の重荷を、軽くできたらと。もし天使が僕に舞い降りたなら、暴力をなくしてくださいと、祈る。信じることを、躊躇わない。きっと今夜の月が導く明日は、きれいだから。